会社理念
岩田社長は、きのこバカ。
ピカピカに輝いた社屋ではない。平屋建てである。扉も自動ドアではない。横開きの安っぽいサッシ扉の先に、アイ・エム・ビー株式会社の管理オフィスはあった。
パッとしない小さな会議室に通されて、スグに岩田社長は入ってこられた。作業服を着た角刈りのオッさんである。ちょっと怖い。子どもが見たら泣くかもしれない。
打ち合わせがはじまった。岩田社長が話すことと言ったら、全部、きのこのこと。研究のこと。初対面の、こんないい加減なプランナーに、これでもかという研究資料を渡された。たぶん読まない。読んでもわからない。そんな資料を丁寧に説明されようとした。
近頃、マーケティングがどうのこうのという小賢しい社長が増えた。そんな人たちばかりを相手しているワタシにとっては、誠に新鮮。久しぶりに「バカ」と出会った。「きのこバカ」である。
これは、信用に値する。透明である。福岡の片田舎で、一所懸命に菌床と戦っている。この戦いに、手を貸したくなった。ワタシも、これくらい不器用に生きたかった。
「培う」土地柄。
きのこを「育てる」というのは、なんかしっくりこない。「養う」でもない。いちばんしっくりくるのは「培う」である。種を植えて水をあげるだけではない。「菌糸」を扱う。その「培地」こそがきのこ栽培の要諦なのである。だからこそ「きのこは培う」のである。不器用なくらい真面目じゃないとできないのである。
Human=人間の、語源は、ラテン語のHumusであると、どこかで読んだことがある。ラテン語Humusの意味は、腐葉土。意のままにならないものを受け入れて、それでも待って待って・・・・未来の訪れのために構える、備える、主体性がある。自分を超えたものにつきしたがう精神に根付いた主体ある言葉が、ヒューマンの語源だ。腹を決めるということは、人事を尽くして天命を待つことだ。腐葉土になる覚悟のことだ。
アイ・エム・ビー株式会社には、そんな腐葉土となる覚悟がある。「きのこバカ」に集まる人たちは優しい。粘り強い。培われた土地柄がある。社風がある。
アガリクスをバカにするな!!!
アガリクスと名前を聞くと「怪しい」と眉をひそめる人もいる。「ガンに効く」とかなんとか言って、べらぼぅに高いアガリクスを販売する会社が増えて、世間様から叩かれた。その風評被害にあって、アイ・エム・ビー株式会社も事業縮小を余儀なくされた。
しかし、倒産などしていない。アガリクスの研究をいまも続けている。「良いものは良い」のである。アガリクスを育てて、それを加工して販売している会社なんて、もう日本にはほとんど存在しない。アガリクスの研究を続けているからできることである。きのこバカだから続けていられる事業なのである。
アガリクスの栽培で得た菌床製造のノウハウは、もしかしたらもしかして、あの松茸まで自家栽培できるようになるかもしれない。松茸まで培うことができる技術が、ここアイ・エム・ビー株式会社にはある。アガリクスをバカにするな!!その可能性は、無限大である。
日本一の菌類育成企業へ。
アイ・エム・ビー株式会社は、どこに向かうのか?企業理念はあるのですか?と、きのこバカである岩田社長に問うた。すると返ってきた答えは「あると思うな理念と定年」である。笑
潔い!!!世間様を健康にするためのきのこを黙々と研究し、栽培を続けて、できるなら死ぬまで働いて欲しいと考えている。戦略もクソもない。今日がある。明日のお客様のために、いまがある。
あまりに何もないので、どうせなら「日本一の菌類育成企業」になりましょうと提案した。菌床を培うノウハウを、この日本に広げることのできる大きな企業へと育ってもらいたいと心の底から思う。
人工知能がたくさんの職を奪っていくといわれている。「賢い」ことは、もうそっちに任せるしかない。しかし、AIは、きのこバカになることを選択はしない。そんな貧乏暇なしを選ぶわけがない。だからこそ、勝ち残れるのではないかと考えている。
きっと数年後、アイ・エム・ビー株式会社は、日本一の菌類育成企業になっている。
推薦人:中村修治